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【面白い小説を見つけるために#1】ジュブナイルの思い出

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穂崎萬大。こすぎナイトキャンパス企画運営担当。本の燕居堂店主。

夏のとば口の休日。
本棚を漁っていたら、こんな一文に出くわした。

僕が最初に本を詠み始めた時、といっても絵本類の段階を抜きにして考えると、小学校入学の少し前からだったと思う。最初は、他の誰もがそうであるように、僕も童話の類にとりついた。
(中略)
まもなく童話に対し物足りなさを感じ出し童話から次の段階に進んだ。そこで読んだのが、マークトゥエインの「トムソーヤーの冒険」「ハックルベリーフィンの冒険」、デフォーの「ロビンソンクルーソー」、メーテルリンク「青い鳥」、バーネットの「小公子」、アミーチスの「クオレ」、ストウ夫人の「アンクルトムズケビン」、コロディの「ピノキオ」、スティーブンスンの「宝島」等だった。

これを書いたのは、橘隆志くん。のちの評論家・立花隆である。作文は中三のときのもので、タイトルは「僕の読書を顧みる」ときた(立花隆『ぼくはこんな本を読んできた』文春文庫所収)。引用文の箇所は小学三年生前の〈読書遍歴〉である。
栴檀は双葉より芳し。
この一文を読むと、ため息しか出てこない。しかも、彼は小学生のうちに当時でていた河出書房の世界文学全集を学校の図書館から借りて読み、小学低学年のときに読んだはずの『ロビンソン・クルーソー』等の小説が、じつはダイジェスト版だと知って、改めて完本を全集で読み直したというのである。なかでも、ユゴー『レ・ミゼラブル』完読は、彼に〈大いなる達成感〉を与えたようだ。

翻って、自分が小学生低学年のときにはなにを読んでいただろうか。これが、記憶力が悪いせいもあってたいして覚えていない。
それでもなんとか思い出すのは、モーリス・ルブラン原作でポプラ社からでている「怪盗ルパン全集」がわりあい好きだったことで、この全集は南洋一郎の訳(抄訳)だった。黄色い背景色に、スミのゴシック体のタイトル配置された、タイガースカラー鮮やかなシリーズだ。
いまはこうしてまとめサイトができているから、有難い。ちなみにルパン生誕100年のとき(2005年)、朝日新聞「天声人語」もこの全集のことを取りあげて、南洋一郎の功績を称えている。

ルパンといえば、なにを思い出すだろう。
『813の謎』『奇厳城』『カリオストロ伯爵夫人』あたりか。南版全集では、『虎の牙』『黄金三角』『七つの秘密』がとっさに浮かぶ。『三十棺桶島』というのもあったな。図書館ではなく、たぶん購入してもらったのではないか。

けれど、まわりの友だちはだいたいがシャーロック・ホームズか明智小五郎の本ばかりを抱えていて、つまりはドイル派か乱歩派といったところが人気があり、ルパン支持者は見当たらなかった。
その当時は意外とは思わなかったが、いま読んでもホームズはジュブナイル(少年少女物)には向かないし、乱歩はいささか怪奇がかっている(これは偏見だろう)。子ども心には、ルパンは面白いと感じていたのだが。

ホームズは新訳が繰り返されていたり、乱歩の短編は様々な切り口のシリーズ物を企画されたりと、いまでも人気があるのに比べて、ルパン物はあまり冴えないように感じる。
子どもには怪盗はヒーローなのだが、長じていくと日本人は怪盗より名探偵が好きになるのだ、きっと。(つづく)

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穂崎萬大。こすぎナイトキャンパス企画運営担当。本の燕居堂店主。

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