【アマビエブックス #9】円城塔・田辺青蛙『読書で離婚を考えた』

【書名】『読書で離婚を考えた』(幻冬舎文庫)
【著者】円城塔・田辺青蛙
【刊行年】2020年
「誤解して結婚し、理解して離婚する」。
先輩編集者が、とある目出度い席でぼくの耳元で漏らした一言である。その数年後そのカップルは目出度く別離した。そこに〈相互理解〉が存在したかどうかは不明だが、少なくとも納得ずくではあったんだろう。
しかし「読書で離婚を考えた」とは不穏ですね(笑)。なにがあったのか、読み手は気になって手にしてしまう。どうやら、ふたりは「読書リレー」というゲームをしているらしい。例えば夫が妻に読むべき本を提示し、妻は読んでその感想を書いたら、今度は妻からから読むべき本を夫に提示する。その繰り返しを40回にわたって行った。
お互いにその中から(お互いの本棚から:引用者註)こういうのを読んで面白かったよと話しあううちに、なんとなく本を勧めあって読書感想文を交換しあえないだろうかみたいな企画がポンと頭から飛び出てきたわけです。
「夫婦で本を勧めあい、感想を交換すれば、相互理解が進み、仲良くなれるはずだった」(カバー解説)目論見はしかし、「どんどん雰囲気が険悪になっていく」(同解説)とあるのだが、ぼくにはそれほどとも感じなかった。お互いの感想のなかで嫌味のようなくだりは感じるけれど、切った張ったまではないような。単にぼくが鈍感なのだろうか。ぼくには夫婦ふたりの見ている世界が違うだけだと思うだが。
とはいえ、
読書で離婚を考えた、というのはなかなか挑発的なタイトルで、わたしとしては乗り気ではなかった。今も同じ気持ちでいる。
と円城塔はあとがきで書いているのを見ると、ここまで読み進めてきた読者はちょっぴり寂しい。それでも田辺青蛙の「文庫版あとがき」を読むと、少し救われた気がするかな。夫婦ってのは、まあ他人からは解らない生き物です。