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【アマビエブックス #11】高橋良平+東京創元社編集部編『東京創元社文庫解説総目録[付・資料編]』

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穂崎萬大。こすぎナイトキャンパス企画運営担当。本の燕居堂店主。

【書名】東京創元社文庫解説総目録[付・資料編]』(東京創元社)
【著者】高橋良平+東京創元社編集部編
【刊行年】2010年

創元推理文庫は、日本で初めてのミステリ専門文庫として、1959年4月にスタートした。初回は、『兇悪の浜』『黄色い部屋の謎』『赤い館の秘密』『ベンスン殺人事件』の4点を同時発売。ガストン・ルルーの名作が初回刊行とは知らなかった。当初は「週刊文庫」のキャッチフレーズで、基本的に一冊ずつ、毎週金曜日発売だったという。

この総目録は、ミステリ以外にも、SF、ホラー、ファンタジー、一般文芸と、2010年3月までの文庫全点2500点の内容紹介をつけている。
たかが、目録と蔑むことなかれ。開高健は若き日のエッセイで、文庫解説総目録のことを「隠れたベストセラー」と言って密かな愉しみとしていたことを明かしている。

文庫の目録となると(新聞の広告と違って-引用者注)、キラキラ、ドカドカの、何もない。誰もいない、小さな空地で、夜ふけにたったひとりで体操をしているようなものである。

今回の総目録では、しかし、別冊の「資料編」が面白い。創元推理文庫やそのもとになった単行本などに関して、過去の座談会やエッセイ、刊行リストなどが入っている。東京創元社自体の年譜もある。
なかでも興味をひいたのが、編集者・厚木淳のインタビューだ。厚木は、創元推理文庫の生みの親である。創元社入社時は旧制京都大学経済学部2年生だった。編集者として『世界推理小説全集』などを担当し、創元推理文庫にSF部門を設けたのも彼だったし、翻訳者としても活躍した。

そんな彼が外国のミステリをだすときに相談したのが、小林秀雄だった。小林秀雄はもともと創元社の取締役であった。
創元社が1929年に第1回目の倒産をしたあたりのことだ。

(中略)この倒産という一大手術のがなかったら、ミステリは出せなかった。小林秀雄先生にも編集長の秋山孝男さんにも、何かで方向転換しなきゃあ駄目だという気持があった。そこで僕が外国のミステリはいかがでしょうかと提案したのが皮切り。ただ、小林先生がどう反応するかが読めなかった。そのころは小林先生の鶴の一声で企画が決まったからね。小林先生が駄目といったら、もう駄目。恐る恐る切り出したら、「ああ、いいだろう。おれはよく知らないけれど」って(笑)。小林先生自身も、もう企画に困っていたのよ。

小林秀雄は倒産後も会社に残り、編集会議を主宰した。ここで生まれたのが『世界推理小説全集』で、江戸川乱歩などがこの企画に関わってくるのである。

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