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【アマビエブックス #13】アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』

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穂崎萬大。こすぎナイトキャンパス企画運営担当。本の燕居堂店主。

※ネタバレあります。
【書名】『そして誰もいなくなった(AND THEN THERE WERE NONE)』(ハヤカワ文庫)
【著者】アガサ・クリスティ(青木久惠訳)
【刊行年】2010年

クリスティを読むのはもう10年ぶりくらいだろうか。ぼくは彼女のまったく好い読者ではなくて、最後に読んだのは『アクロイド殺し』だったか『ABC殺人事件』だったか。いや、『春にして君を離れ』のような気もする。今回、筒井康隆『読書の極意と掟』(講談社文庫)を読んでいて、ふと気まぐれに手にとってみた。

イギリスのとある孤島の別荘に招かれた10人の客が、マザーグースの古謡「10人のインディアン」の歌詞に沿うかたちで次々と死んでいき、最後のひとりも自殺して、ついには「そして誰もいなくな」るというストーリィ。

じつは、これらの殺人はたったひとりの犯人による連続殺人である。そのタネ明かしは最後に控えているのだが、それよりも10人がどんどん「引き算」されていく展開がページをめくる手を止めさせてくれない。
明らかに全員を殺そうとしている犯人が10人のなかにいることが客全員に共通認識され、だんだんと残る者が少なくなっていくにつれて、生き残った者たちがお互いを疑心暗鬼のまなざしで見はじめる雰囲気にこちらもつい引きこまれていく。

犯人の(その偽装死も含めた)描写は、読者が誤解を招くように巧妙に表現されている。その英語での表現を知っていれば、いや知っていても、見破れるだろうか。
要するに、真犯人は死んではいなくて、そう見せかけているのである。その手法はバールストン先攻法(ギャンビット)と呼ばれる手法で、この作品がその先駆けらしい。ちなみに先攻法とはチェスの用語で、より大きな目的のために自分の手駒をわざと犠牲にする戦術の総称だとか。

巻末の赤川次郎の解説は、短いけれど力のこもった一文だ。この作品の魅力について簡潔にまとまっており、本編を読んだあとにちょうどいい総括になっている。

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穂崎萬大。こすぎナイトキャンパス企画運営担当。本の燕居堂店主。

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