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【アマビエブックス #33】村上春樹「夏の終わり」(『村上朝日堂の逆襲』より)

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穂崎萬大。こすぎナイトキャンパス企画運営担当。本の燕居堂店主。

【書名】「夏の終わり(『村上朝日堂の逆襲』所収)
【著者】村上春樹
【刊行年】1989年

また村上春樹か、と言われそうだが、まあハルキストなんだから仕方ない。ぼくは彼の小説よりはエッセイや雑文のほうが好きで、とくに初期ののそれは好きなので、その回数はずいぶん減ってしまったけれど年に何回かはパラパラと読み返す。

そのエッセイの中でも、わりと好きなひとつが、この「夏の終わり」という一編である。8月というカレンダが終わるころ、ふと思い出す。

いよいよ夏も終わりである。僕は夏大好き少年・おじさん(という表現をわりあい自嘲的な意味あいで使用することが多い)なので、夏が終わるとかなり哀しい。夏なんてまた来年も来るんだからと自らにいいきかせても、海の家がたたまれたり、赤とんぼが空を舞ったり、海岸にウェットスーツ姿のサーファーが増えたりするのを目にすると、良いことなんてみんなもう終わってしまったんだという気がしてならない。

今年の夏はいつもの夏とはまったく違っている。コロナ禍というのもあるし、子どもたちの夏休みは短かったし、何より夏という季節はもう〈危険な季節〉になってしまった。うっかり外を出歩こうにも、マスクを着用での外出は一歩間違えば命に関わるくらいだ。みんな日中は外に出るな、とさかんに言われている。室内ではずっとエアコンをつけっぱなしだ。実家からは帰省するなと言われるし。

30年以上前のエッセイを読み返してこのごろの夏を振り返ると、夏がノスタルジーを抱かせるような季節ではなくなったかのように思えてしまう。
それでも夏という季節は、やっぱり心踊る時間であってほしいなと思う。

 

 

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穂崎萬大。こすぎナイトキャンパス企画運営担当。本の燕居堂店主。

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