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【アマビエブックス #31】村上春樹/川上未映子『みみずくは黄昏に飛び立つ』

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穂崎萬大。こすぎナイトキャンパス企画運営担当。本の燕居堂店主。

【書名】『みみずくは黄昏に飛び立つ』
【著者】村上春樹/川上未映子
【刊行年】2019年

いま取り組んでいる、大学の卒論構想の方法にはあてはまらないかもしれないけれど、着想の仕方ということでは参考になるかもしれない。昔の投稿をサルベージした。ま、卒論も最初のテーマ決定が大事なので(とくに、ぼくが勉強している通信教育課程での卒論は、そのテーマと最低限1年半は付き合わなければならないので)。


「解体する」とは羊頭狗肉かもしれないけど。村上春樹・川上未映子『みみずくは黄昏に飛び立つ』(新潮社)から引用してみた。
長編を書きはじめるときの「三つの要素」について。

僕の記憶によれば、まずタイトルができた(「騎士団長殺し」のこと。引用者註)。それとは別に上田秋成の『春雨物語』に入っている「二世の縁(にせいのえにし)」という話が僕は昔から好きで、あれをモチーフにしたものを何か書きたいなと、ずっと昔から思っていたんです。
それと「騎士団長」というタイトルが一緒になって。でも、「二世の縁」と「騎士団長殺し」ってぜんぜん結び付かないですよね(笑)。
それともうひとつ。第一章の出だしの文章、「その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入り口近くの山の上に住んでいた」から「エアコンがなくてもほぼかいてきに夏を過ごすことができた」までの文章を、僕はどこかの時点で書いていたんです。これという目的もなく、そういう文章を書き留めていた。(適宜改行は引用者による)

長編小説は息の長い作業ですね。

だから、『騎士団長殺し』に関していえば、その別々の三つの要素がスターティング・ポイントになっているわけです。冒頭の一節の文章と、「騎士団長殺し」というタイトルと、それから、何だっけ? そう、「二世の縁」をモチーフにすること。その三つが別々にあって、それがひとつに結びついていくんです。
(中略)
だから僕の場合は、長編小説というのは、ほとんどが待つ作業なんです。二年ぐらい待って書き始めて、一年か二年かけてそれを書き上げる。だから、書いている時間よりはむしろ待ち時間のほうが長い。サーファーが沖合で波を待つのと同じような感じです。(適宜改行は引用者による)

(中略)
だから、とにかく最初に三つのポイントだけを設定して、何が起こるかを見る。そしてそれぞれの要素がいろんな新しい要素を引き込んでいく過程で、自発的にじわっと熱が出てくる。
長編小説というものはある意味、そういう自然な発熱を見つけていく作業だと僕は思うんです。だからこそ作家は、一年とか二年、じっと我慢強く待たなきゃいけない。これが書き始める確かなポイントであるという確信を持てるまで。適宜改行は引用者による)

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穂崎萬大。こすぎナイトキャンパス企画運営担当。本の燕居堂店主。

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