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【アマビエブックス #38】柳田邦男『空白の天気図』

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穂崎萬大。こすぎナイトキャンパス企画運営担当。本の燕居堂店主。

【書名】『空白の天気図』(文春文庫)
【著者】柳田邦男
【刊行年】2011年

〈戦後最大級〉ともいわれる台風が接近している。日本列島に上陸するという恐れはないらしいが、瞬間最大風速85m級の台風らしい。掠めて通過するだけでも、被害予想は想像できない。

かつて日本を襲った数々の台風にも、大被害をもたらしたものはいつくかあった。
敗戦からわずか1ヶ月あとの、1945年9月17日、日本列島を襲った枕崎台風は、死者行方不明者3000人を超す被害をもたらした。
そのうち2000人強が広島県での被害者となった。なぜ広島の地でそれほどまでに多くの犠牲者が出たのか。この本はその答えを得ようと、原爆の災禍に苦しみながらも、観測と調査をつづけた当時の広島気象台台員たちの苦闘に迫っていく。

もともと新潮文庫にはいっていたものの絶版となり、東日本大震災を契機に作者の発案で、文春文庫で復刊となった。作者によれば、それにあたっては、同じようなテーマを扱ったいくつかの本を再刊あるいは新たに編集して、それらの本の通しタイトルに「核と災害」とつけたという。
一貫して「いのちの危機」をテーマにノンフィクションを書いてきた作者らしい発想である。
この本は、さいきんまで「中央公論」に、後藤正治が連載していた『探訪 名ノンフィクション』(中央公論新社)の最初に登場する作品だ。沢木耕太郎との対談では、柳田邦男の作品としては『ガン回廊の朝』(講談社文庫)を選ぶべきかもと少し迷ったようだが、「ただ書き手の本質的な部分が濃厚に出るのは、割と初期の作品が多いように思うのです」(「中央公論」2013.6月号 沢木耕太郎×後藤正治「鋭角と鈍角 ノンフィクションの方法論について」)。

『空白の天気図』は、広島の原爆被災と約1ヶ月後の枕崎台風災害という二重の厄災であり、それから75年近く後ぼくたちが直面しているのは、新型コロナウィルス感染症とそれによる経済悪化という二重の厄災である。この本から幾何かのメッセージを受け取るのに時代遅れということはない。

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