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【アマビエブックス #44】立花隆『天皇と東大』

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穂崎萬大。こすぎナイトキャンパス企画運営担当。本の燕居堂店主。

【書名】『天皇と東大』(文春文庫)
【著者】立花隆
【刊行年】2012年

あの戦争に関する通史は、否応なしに大部になる傾向がある。ま、仕方ないのでしょう。
物事は、ご存知のように単純明快ではなく、

歴史で起こるすべてのことには長い長い経緯がある。タテ糸とヨコ糸の長い長いつらなりがある。歴史は掘れば掘るほど、複雑な因果関係の網の目のもつれがでてくる。そこが見えてくればくるほど、歴史は誰かのミスないしはミスリードによってこのような展開をしたのではなく、やむを得ざることの連鎖によってこのような展開をとげてしまったのだというほうが正しいと思えてくる(「文庫版のためのあとがき」より)。

単行本で上下段組で上下巻、文庫本で全4冊の大部さは、読み手をひるませるに充分だけれど、先日紹介したジョン・トーランド『大日本帝国の興亡』もそうだが、あの戦争を鳥瞰するのはある程度の覚悟はいるのだろう。
繰り返すが、物事は白黒単純につけられるものではないのだから。

「立花隆の近現代史」といってもいいこの本は、たとえば丸山真男の『現代政治の思想と行動』が抽象的な言説で超国家主義者たちを断罪していことに不満を持っていた立花が7年の歳月をかけて記したものだ。
彼は「ノンフィクション・レポート」として、《丸山が抽象的な断罪で切り捨てた超国家主義者たちの論理と心理のリアリティを、彼らの頭のヒダの中と心のヒダの中までわけいることによってより深く追求し、あの時代の変化をもっとリアルに知りたいと思っ》て書いたという。

戦後75年。
終戦記念日の一日、たとえば4巻目の第64章でも目を通していただければと思う。
そして、例えば発表された戦後70年の首相談話(安倍談話)を読んでいただけたらと思う。
戦後日本は、大日本帝国の死の上に築かれたものだが、その屍とわれわれの国家とは無数の糸でつながっていることが感じられてくるだろう。

もう一度、故山本夏彦のことばを引く、「百年は同時代」なのである。

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穂崎萬大。こすぎナイトキャンパス企画運営担当。本の燕居堂店主。

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