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【アマビエブックス #45】深代惇郎『深代惇郎の天声人語』

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穂崎萬大。こすぎナイトキャンパス企画運営担当。本の燕居堂店主。

【書名】『深代惇郎の天声人語』(朝日文庫)
【著者】深代惇郎
【刊行年】2015年

この文庫が出た2015年は朝日新聞記者・深代惇郎の没後40年にあたる。ということは、今年2020年は没後45年ということだ。
朝日新聞1面の名物コラム「天声人語」。深代惇郎は、この欄を昭和48(1973)年から2年9ヵ月にわたって執筆、この短い期間に読者を魅了し続け、新聞史上最高のコラムニストとも評されながら、昭和50(1975)年12月、急性骨髄性白血病のため46歳の若さで急逝した。

本書は、その名コラムニストによる天声人語ベスト版だ。

ここで触れておきたかったのは、朝日新聞の「名物コラム」(しつこく言うが「名コラム」ではない)の歴史と問題点については、日垣隆『エースを出せ!』(文春文庫)を、そして深代惇郎の「天声人語」が持っている「コラムの矜恃」については、坪内祐三『考える人』をぜひ手にしていただきたいということだ。

坪内さんがそこで紹介しているのは、田中角栄元総理退陣につながった「文藝春秋」の立花隆、児玉隆也レポート(「文藝春秋」1974年11月号掲載)にたいする、深代惇郎自身が「天声人語」でみせたコラムニストの矜恃と勇気だ。

雑誌『文藝春秋』十一月号が特集した「田中角栄研究–その金脈と人脈」のレポートは、もっと問題にされるべきだ。もしここに書かれてある内容が事実ならば、そのそのような人を総理大臣に持ちたくない。もし事実でないならば、首相は身の潔白を自分の言葉で説明すべきではないか。

とはじまるコラム「角栄研究」は、1974年10月19日の朝日新聞朝刊に掲載された。
「文藝春秋」の発売日は毎月10日である。とすればこの号の発売は10月10日(この日は祭日なので翌11日に書店に並んだ)。
しかし、巷間よく言われているように、このレポートが公開されても世間は、いや報道はそんなに騒がなかった。新聞の政治記者の多くが(もちろん、朝日新聞だって例外ではないでしょう)それを知っていたにもかかわらず、「あえて書かない」という反応だったという。
ようやく火がつくのは、10月22日の外国人記者クラブでの、文春レポートにたいする角栄自身の釈明からだった。
その3日前に、深代惇郎は、朝日新聞の一面のコラムで、自分の意見を述べたのである。彼は勝ち馬に乗らなかった。乗る前に旗幟鮮明とした。こういう眼のつけどころが、坪内さんだ。
坪内さんはこう書いている。

皆が騒ぎ立ててから、それに乗っかるように、ある意見をはくのは簡単です。しかし、そうなる前に、このようなきっぱりとした言葉を口にするのは勇気がいります。しかも舞台は「天声人語」です。それが、たとえ個人的な意見であったとしても、世間はそれを、朝日新聞社のオピニオンとして受けとめ、それに意見します。
そのことを充分に自覚しながら、深代惇郎は、「天声人語」を舞台に、自分の声を発信し続けました。

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