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【アマビエブックス #53】細谷功『具体と抽象』

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穂崎萬大。こすぎナイトキャンパス企画運営担当。本の燕居堂店主。

【書名】『具体と抽象世界が変わって見える知性のしくみ 』(dZERO)
【著者】細谷功
【刊行年】2014年

「具体」は解りやすい。
「抽象」ってのは、解りにくい。
というのが、世間の一般的な印象です。もっと単純に言うと、抽象というのは解りにくいので実践的でなく、否定的な意味が含められてもいるように見受けられます。

これほど役に立ち、人間の思考の基本中の基本であり、人間を人間たらしめ、動物と決定的に異なる存在としている概念なのに、理解されないどころか否定的な文脈でしか用いられないのは非常に残念。

と著者はいいます。
そして、この本で「抽象」の「市民権を取り戻す」と言いきっています。
かといって、「具体」と対決するわけではない。
要するに、セットで考えなければならない。
そのためのステップとして、「抽象」のモデリングをコラム風に紹介しながら、あるいは両者のあいだの往復運動が必要だと説明していきます。
さらには、「見える人」(抽象化の思考をする人)と「見えていない人」(具体化の思考をする人)とのコミュニケーションギャップの解消にも役立てようと。

抽象化のモデルというのは、たとえば、デフォルメがあります。似顔絵とか物まね。対象の本質を掴んで枝葉を捨てる。あるいは、数字と言葉。哲学。法則とパターン認識。アナロジー(類推)、ベクトル。。。

「抽象化なくして生きられない」からスタートしたこの本は、しかし「抽象化だけでは生きにくい」ことも示してくれます。前述しましたが、「抽象化」は「具体化」とのセットになってはじめて有効に機能すると。

福沢諭吉は「高尚な理は卑近の所にあり」という言葉を残しています。まずは徹底的に現実を観察し、実践の活動を通して世のなかの具体をつかみ、それを頭の中で抽象化して思考の世界に持ち込む。
そこで過去の知識や経験をつなぎ合わせてさらに新しい知を生みだしたのちに、それを再び実行可能なレベルにまで具体化する。これが人間の知とその実践の根本的なメカニズムになると考えられます。

コラムはひとつが数ページで読みやすいです。章のテーマをマンガで描いたのページを捲っていて愉しいですね。物事の整理にあたっては、ちょいと眺めるだけでもヒントがもらえるかもしれません。

じつは、総合雑誌「文藝春秋」本誌の寄稿記事を読みながら、面白い記事というのはこの「抽象と具体」を巧みに織り交ぜている記事なんだなあと、改めて感じ入った次第です。
具体的な数字や状況描写、インタビュー等、それら〈事実〉の積み重ねから類推される大状況、トレンド、予測といった、抽象化。

これらがきちんと整理されていて、読者に提示されている記事というのは、文体云々もありますが、読者へ説得力を提供し〈読み応えのある〉記事として認識されます。

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穂崎萬大。こすぎナイトキャンパス企画運営担当。本の燕居堂店主。

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