【アマビエブックス #58】羽生善治『才能とは続けられること』

【書名】『才能とは続けられること』(PHP研究所)
【著者】羽生善治
【刊行年】2012年
NHKのBS放送で、10年ほどまえに放映されたインタビュー番組がある。
「100年インタビュー」。HPを観ていただければ解りますが、錚錚たるお歴歴。100年という時間軸は大仰かもしれないが、100年というスパンは同時代だという人もいて、その伝でいえば番組は「同時代史」といってもいいし「先達の名言集」といってもいい。
羽生さんのこの本は、この番組から生まれて、シリーズ本化されている。その人の為人がコンパクトにまとめられていて、インタビューイーの入門書でもある。
羽生さんは、小学校1年生のときに、友達との遊びのひとつとして将棋に出会います。
初めは弱くて負けてばかりだったが、しかし、いくらやってもコツがつかめないところが面白いと夢中になった。いまだにコツが掴めないという。
コツが掴めないところに面白さの原点があるというのが、面白いですよね。
小学校6年生でプロ棋士の養成機関「奨励会」に入会し、中学生のとき4段となりプロデビューを果たした。はじめてタイトルを獲得したのは、19歳(1989年)のとき。「竜王」だった。
しかし翌年の防衛戦では、谷川浩司さんに破れてしまう。1勝3敗。
羽生さんはその一戦がのちの自分の将棋観を変えたといいます。この大負けが、いまの自分を作ったと。1996年には、前人未到の7大タイトル全てを独占しました。
だが将棋は厳しい勝負の世界。いくら七冠といっても、浮き沈みもある。
将棋はマラソンのようなもの。常にを走り続けなくてもいい。ときには後に下がってもいい。
大事なことは、その先頭集団の中に、いつも自分が入っていることです。
では、続けられる才能とは何だろうか。
パッとひらめくこと、たくさんの手が読めることはひとつの才能ですが、地道に、着実に、一歩一歩前へ進み続けられることは、なによりの才能ではないかと思います。